記憶の具体例

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記憶・本能



人の顔はどうして覚えられるのか

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◆ 人の顔を覚える顔細胞





赤ん坊は母親の顔が近づくと笑顔で喜ぶ。
未だ大脳皮質が発達していないのに何故なんだろうと思った事は無いだろうか。


生まれて間もないのに既に母親と他人の顔を識別している。


また、大人でもAさんとBさんの顔を識別していて間違える事が無い。
でもネコや犬の顔は大人でも識別が難しい。これは何故なのだろうか?


実は顔を覚える記憶には専門の領域が有るから出来る技なのだ。


顔の記憶を専門に引き受けているのは、側頭連合野にある顔細胞。ここの神経細胞に知っている人の記憶が貯えられている。


仮にここを損傷してしまうと、身体の特徴では知っている人を識別出来るのに、顔では識別出来なくなってしまう。


初めて有った人の顔も両親の顔も、さらには自分自身の顔も識別出来なくなってしまう。


この顔細胞が敏感に反応するのは、目・鼻・口である。人間はそこの特長を良く捉えて識別している事になる。


この顔細胞、識別できるのは相手が人間の場合だけ。従ってネコや犬の顔は識別が難しい。


人の顔を覚える顔細胞


直ぐに消える記憶:ワーキングメモリー


◆ ワーキングメモリー


例えば会話をする場面。
女性はオシャベリが好きで、普段何気なくやっている速射砲の様なオシャベリにも凄い技を駆使している。


会話は相手が今言った事を記憶しておいて、自分が話す段では相手が言った事を記憶から引き出さないと会話にはならない。聞く⇒話すにはタイムラグが有るから。


又相手が返答した時には、今さっき自分が言った事を記憶から引き出して照合する必要がある。
そうしないと会話として成立しない。


またこの記憶は、1時間もの間は貯えておく必要は無く、数分間だけ貯えておいて、後は直ぐに消えても問題は無い。


買物をして合計金額を計算しておつりを貰って正しい事を確認したら、もう覚えている必要は無い。


1週間前の買物で、何が幾らで合計で何円出して何円おつりを貰ったか、覚えている人がいないと思う。


この様な、ある特定の場面で、数分間にわたり記憶を貯え引き出し、用が済んだら忘れてしまうプロセスをワーキングメモリーと呼んでいる。


これは短期記憶とは異なるもので、暗算や会話など、ある特定の作業の作業を行うために必要な記憶であり、作業が終ったら消滅させてしまうものである。


短期記憶の方は長期記憶へと変わってゆくものもあるが、ワーキングメモリーにはそうした事は無い。


ワーキングメモリーの働きを担当しているのは、脳の前頭連合野である。


直ぐに消える記憶


無意識に操られている脳:プライミング記憶


◆ 本人も忘れているプライミング記憶が、判断や着想を規定している 


忘れてしまう程の前の経験でも、プライミング記憶で無意識に刷り込まれてしまう判断基準


映画の話題で雑談した後に、思いついた職業を言って貰うと「俳優」や「監督」と言った映画に関係しそうな業種が無意識に出てきやすいのが「プライミング記憶」です。


前に出会ったものや、それに関係するものを思い出しやすくして置くのは、一瞬の選択が生死を分ける野性の世界で生き残るための、生物としてのサバイバル戦術です。


このプライミング記憶も、手続き記憶の1つと考えられています。


なぜなら、意図的に思い返す様な記憶の定着作業をしなくても、1年以上プライミング記憶が残るからです。


また、一時期話題になったサブリミナル効果(映画やテレビに1コマだけメッセージ性の高い映像を忍ばせる)は、本人が経験として認識していないので、プライミング記憶とは全くの別物です。


さらにもう1つ、過去の経験によって行動が影響されるものとして「オペラント条件付け」があります。


これは、過去の経験によって行動の選択を好き嫌いの感情で行う様になる条件反射です。


「得意分野」「苦手意識」です。


好きでどんどんやりたい事や、何となく苦手で嫌な気がするもの。これ等は、過去の嬉しかった経験や嫌な経験の感情が大脳基底核や、情動に関係する大脳辺縁系の扁桃核が海馬の記憶定着に関係するからです。


プライミング記憶


人は何歳になっても記憶できる


◆ 物忘れしても人は何歳になっても記憶できる


人は歳をとると、記憶力が落ちたり、物忘れが酷くなったり、と嘆く人も多い。でも、本当にそうだろうか?


人間の脳は神経細胞の組み合わせによってシナプスを作りネットワークとして物を覚えている。


最初のうちは使い易いシナプスのネットワークを使って記憶しているのだが、何年も生きて行くうちに使い易いネットワークを使いきってしまい、仕方が無く、今まで使っていなかったネットワークや使いにくいネットワークを使う様になる。


その分覚えにくくなっている。しかしそれで覚えられないと言う事でも無い。
人間は何歳になっても新たに物を覚える事が出来るのである。


物忘れの場合は、思い出しなさいと言う指令が回路(ネットワーク)の回りを回っているだけで、なかなか回路の中に入ってゆけなくて、思い出せない。


しかし指令のエネルギーが有る程度強くなると、回路内に入り込む事があり、突然に思い出す。
つまり、物忘れがするからと言っても記憶が消えている訳ではない。


こういう状態でも、新たにシナプスのネットワークを作って物を覚える事が出来る。
だから何歳になっても、新しい事は記憶が出来るのである。


また記憶喪失の場合でも、数日間から数年間の記憶は思い出せない事は多いが、言葉や生活習慣の記憶は残っていて、日常生活で行う行動は記憶に残っているので生活も出来る。


実際にどういうメカニズムで記憶喪失になるのかは未だ解っていない。


何歳になっても記憶できる


自転車の乗り方は何故忘れないのか


◆ 技の記憶


子供時代に一生懸命練習して覚えた自転車の乗り方は、たとえ数十年のブランクが有っても忘れないでいて、直ぐに乗れる。


またピアノやバイオリンを覚えた人も、ブランクが有って腕は落ちたとしても忘れないでいて弾ける。


これを運動記憶とか技の記憶とか言う。
この記憶は陳述記憶とは違う仕組みで覚える様になっている。


中心的な役割は小脳。小脳は繰り返して行う事で身に付くものや、上達するものに関わっている脳。
小脳だけで無く大脳基底核も関与して、技の記憶ネットワークを作っていると考えられる。


例えば、ピアノを繰り返し練習しても、なかな弾けない日が続き、ある日突然弾けたという経験があると思う。


楽器の演奏にはつき物だが、繰り返し練習する事で技の記憶ネットワークが作られ、ある日完成する。


その完成した日に突然弾ける様になる。


技の記憶


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